大判例

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山口地方裁判所 昭和28年(行)10号 判決

原告 下松土地株式会社

被告 山口県知事

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「被告が(イ)下松市大字東豊井字江口千六十四番地畑七畝九歩、(ロ)同市大字東豊井字中村千百七十四番地の一、田九畝五歩、(ハ)同市大字西豊井字土井八百二十七番地の一、田一反四畝、(ニ)同市大字西豊井字俵屋開作千四百十番地の六宅地十三坪につき、昭和二十七年十月三十一日附で為したる買収処分の無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として請求の趣旨記載の四筆の土地はいずれも原告の所有地であるが被告は昭和二十七年十月三十一日附を以つて前記(イ)、(ロ)、(ハ)の土地を自作農創設特別措置法(以下これを自創法と略称する)第三条により、前記(ニ)の土地を同法第十五条により各買収し(以下これを本件買収処分という)当該買収令書を同年十一月一日原告に交付した。しかしながら本件買収処分には次に述べるようなこれを当然無効たらしめる重大な瑕疵がある。すなわち被告は昭和二十六年七月頃、これよりさき下松市下松地区農業委員会の定めた買収計画により本件四筆の土地をそれぞれ自創法の前記各法条により買収し(以下これを第一回買収処分という。)たが、当該買収令書を原告の右買収計画に対する訴願の裁決がある以前に原告に交付したので昭和二十七年十一月一日に至り右第一回買収処分の違法を認めてこれを取消した。買収計画は買収処分を目的としその前提要件を作るものであつて買収処分と一連一体をなし、これと運命を共にすべきものであるから右第一回買収処分が取消された以上前記買収計画も当然に失効消滅した。しかしてその後本件土地につき改めて買収計画が立てられた事実はないから自創法が廃止された昭和二十七年十月二十一日以降は同法による買収処分は為し得ないのである。しかるに被告は昭和二十七年十月三十一日附で本件買収処分に出で、しかも買収計画によらないでこれを為したものであると述べ、

被告指定代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として原告主張事実中被告が原告所有の本件四筆の土地を昭和二十七年十月三十一日附買収令書を同年十一月一日原告に交付して買収したこと、及び被告が原告主張のような経過で第一回買収処分を為し、その後これを取消したことは認めるが、右第一回買収処分の取消により、その前提となつた昭和二十六年七月以前に定められ、その頃公告された買収計画が当然失効消滅したものではなく本件買収処分は右買収計画によるものであるから何ら違法の点がないと述べた。

三、理  由

自創法による農地又は宅地の買収は市町村農業委員会の買収計画樹立、都道府県農業委員会の右買収計画承認、都道府県知事の右承認された買収計画による買収令書交付又は買収令書記載事項の公告による買収処分という一連の手続を経て完成されるものであつて買収処分は必ず買収計画によらなければならないが右に述べたように買収計画は買収処分に先行する処分であつて買収処分とはその処分機関を異にしそれ自体の目的と法律効果を有する別個独立の行政処分であるから後行処分たる買収処分が取消されたからといつてその基礎となつた買収計画が当然に失効消滅するものではなく、このことは農業委員会法第四十八条、第四十九条からも窺われる。従つて昭和二十六年七月以前に下松市下松地区農業委員会が本件土地につき立てた買収計画(これがその頃公告されたことは原告の明に争わないところであるからこれを自白したものと看做す。)に基きなされた第一回買収処分が取消されたからといつて右買収計画が当然失効消滅する筈はなく、被告が自創法廃止の日たる昭和二十七年十月二十一日以後に属する同年十一月一日に本件土地を買収したことは農地法施行法第二条第一号、第二号により適法であり、又本件買収処分が被告主張のように右の買収計画によるものであること弁論の全趣旨に徴し明白である。それで被告の本件買収処分にはこれを当然無効ならしめる重大な瑕疵はないから原告の本訴請求は理由のないものとして棄却し、訴訟費用については民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 河辺義一 榧橋茂夫 宮崎富哉)

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